美味しそうな居酒屋に入ったつもりが、そこは変態居酒屋だった【第一章 出会い】

私は旦那とレス生活真っ只中であるが、

決して仲の悪い夫婦ではない。

週末旦那と酒場を巡ることが、

結構楽しみなのである。

今回はそんな旦那との酒場放浪で、

とんでも居酒屋にうっかり入ってしまったエピソードを語りたい。

長くなりそうなので、分割してお送りしたいと思う。


そこは駅からほどない距離に位置する50坪程度の居酒屋であった。

Google Mapsに投稿されているレビューも否定的な意見はみられず、

投稿されている料理も舌を誘うものばかりだった。

なによりも午前中から開店しているという「酒飲みのための店」という感じが、またいい。

我々は、ためらうことなくこの店に行くことにした。

18時頃にお店の扉を開くと、

60代位の男性と、50代位の女性が威勢よく出迎えてくれた。

愛想は大変いい。

夫婦かな?

そんな疑問が一瞬よぎったが、

それよりも2人の笑顔の口元からみえる歯が数本足りないことの方が気になった。

またそんな欠けていた歯に対する執着も、

アルコールへの欲求ですぐにどうでもよくなった。


店はカウンター席のみであり、2組の若い男性グループの先客がいた。

私達夫婦が入り、もう店はいっぱいになった。

空いたカウンター席に腰をおろし、

正面のメニューを見て

まず、私は驚愕した。

店中に張り巡らされているメニューのところどころ聞き捨てならない表現が書かれているのである。

・パイパン酎ハイ

・爆乳酎ハイ

そんな文字が飛び込んできた。

一瞬「パイン酎ハイ」かと目を疑ったが、

そこにはしっかりと「パイパン」の文字が。

これは、わいせつ物陳列罪に抵触しないのか。

法律の知識は全くないが、

あっけにとられながらそんなことを思った。

そもそもこんなブログを書いている私が言えた口ではないが。


「あぁ、とんでもない店に入ってしまった。」

自分のことは棚に上げ、こんなことを思った。

欠けた店主らの歯は、序章にすぎなかった。

なにより、夫とこの下ネタにあふれている店に一緒にいるには気まず過ぎる。

夫とは仲はいいが、普段から下ネタを気さくに交わす程の仲ではないのである。

だからブログ執筆に私のエロを全力投球しているのである。

余談であるが。

いくらレス夫婦とはいえ、旦那の前では多少なりとの恥じらいを演じていたかった。


私はこの恥ずかしさをアルコールで紛らわす作戦に出ることにした。

平静を装い夫婦ともどもビールを注文し、いっきに喉に流し込む。

おかげで、この空間に対する麻酔が効き始めた。

この麻酔が効きすぎたのか、

私はこの「パイパン酎ハイ」がなんなのか気になって仕方がなかった。

「爆乳酎ハイ」はおそらく、カルピス的なものがはいったものだろう。

「パイパン」というワードから味を想像することができない。

いや、どちらかというと想像したくない。

決して好奇心以外そそるようなワードではなかった。

ほろ酔った私は、おかみにその謎を訊ねてみることにした。

そして歯が欠けているおかみは満面の笑みで回答してくれた。

「パイパンってのは、何も入っていない酎ハイやねん。」

なるほど。なかなかセンスがいいではないか。

ちょっとおかみのユーモア力に感動したのもつかのま、

「おねぇさんは、パイパンかぇ?」

そんな事を聞いてきた。

まさかここで生えているか生えていないかの逆質問を振られるとは思いもよらなかった。

人間は唐突に質問されたらどうやら正直に答えてしまう習性があるようである。

私は「いいぇ、生えてます。」と真面目に答えた。

私のユーモア力はこのおかみよりかなり劣っていると自覚した。

多分ここでのベストアンサーは「赤面する」の一択であったに違いない。

私は店内の男性客にしっかり「生えている」ということを、周知するはめになった。

見ず知らずの人の前でまさか自分の下の毛事情を伝えるなんて思いもよらなかった。

ほろ酔いのはずなのに、とても恥ずかしくなった。

まだ、麻酔が足りないのかもしれない。

周りの若い男性グループの人々からしたら、

お耳汚しでしかないのである。

本当に申し訳ない。


しかし、ひとつ疑問が残った。

なぜなら爆乳チューハイよりパイパン酎ハイの方が値段が高かったからだ。

「なんで、何も入ってないのにパイパンの方が値段高いんですか?」

とおかみに尋ねてみる。

もう公然に「パイパン」というワードを話している自分に気付く。

私のユーモア力は乏しいが、環境適応能力は高いのだ。

「この酎ハイを注文してもらったら、孫にお金がいく仕組みになってんねん。孫はまだパイパンやろ。だからパイパン酎ハイやねん」とおかみは説明してくれた。

ちょっと深いい話ではないか。

自分の歯のメンテナンスよりも優先して孫に売上金を譲渡している。

想像するに孫は陰毛も生えていないような年頃なのだろう。

もし就学中なら、塾や習い事などさぞかしお金がかかるに違いない。

このメニューが「孫のエンジェル係数支援チューハイ」と名うってくれていたら、

どれだけ頼みやすいか。

ネーミングですべて台無しにしている。

そんな夫婦の不器用さも、愛せてきた。

「じゃあ、爆乳酎ハイ」

と旦那が横でおかみに追加注文した。

私は耳を疑った。

そこはどうあったって

「パイパンチューハイやろが!」

私はそう、心の中で叫んだ。

私の旦那の心に微塵もこの素敵エピソードは響いていなかったのである。

つづく。

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